こんにちは。
絵本専門店グリムのくどえりです。
現在、ベルナール・ビュフェ美術館(長泉)で開催されている
《こわくて、たのしい スイスの絵本展~クライドルフ、フィッシャー、ホフマンの世界~》へ行ってきました(会期は7月2日㊐まで)。そのレポをお届けします。
スイスの絵本展と聞いて、思い当たる絵本はありますか?
なかなか、すぐには思い浮かばないかもしれないですね。
では、
〝エルンスト・クライドルフ〟
〝ハンス・フィッシャー〟
〝フェリックス・ホフマン〟
の名前ではどうでしょう?
もしかしたら、
『おおかみと七ひきのこやぎ』(ホフマン)
『こねこのぴっち』『ブレーメンのおんがくたい』(フィッシャー)
『花のメルヘン』(クライドルフ)
と聞けば、ピンと来る人も多いかもしれません。
『おおかみと七ひきのこやぎ』
『おおかみと七ひきのこやぎ』は、ホフマンがはじめて手がけた絵本です。
おかあさんやぎが留守の間に、おおかみがやってきてこやぎたちを食べてしまうというお話は、皆さんご存知かと思います。
子どもの頃、「どうぞ、こやぎたちが助かりますように」とハラハラして読んだことを覚えています。
絵本展では、当時病気だった三女へのおくりものとして描いた手描き絵本やこやぎたちが住む家のモデルとなった農家のスケッチ等も展示されています。
おかあさんやぎが帰ってきた場面では、鉛筆と水彩で描かれたものとリトグラフで描かれたものが並べて展示されています。ぜひ違いを見比べてみてください。
そして、私が絵本では気が付かなかったこと・・・。
おおかみがなんとも幸せそうな顔で寝ているということ。
そうですよね、こやぎをたらふく食べて眠っているのですから、幸せですよね。
この後に石を詰められると思うと、少し気の毒になるほどです。
最後の一場面は原画から放つ月が煌々と美しかったです。見入ってしまいました。
ホフマンの父親としての満ち足りた気持ちをも感じることができました。
フィッシャー
さて、絵本展の入り口近くには、フィッシャーの「一枚絵」が展示されています。
物語の始めから終わりまでをひとつの画面だけで描いているのですが、これがおもしろい!
たった一枚の中に、順序よくコミカルに描かかれている物語。子ども達の想像力はどんどん膨んでいったことでしょう。
フィッシャーのスケッチも必見です。
思いついたアイデアを形にするために、筆を走らせている様子がうかがえます。フィッシャーの制作過程が垣間見られて、思わず笑ってしまいました。
私の好きな絵本『こねこのぴっち』は、ぴっちの冒険が軽やかなタッチで描かれ、ぴっちや動物たちのしぐさや表情が愛らしい。
三世代でぴっちファンがいるのもうなずけます。
クライドルフは、ホフマン、フィッシャーから少し時代をさかのぼります。
絵本画家の先駆けであり、描画、製版、処理、刷りを一人でこなすクライドルフは、まさに職人!
印刷といっても、当時はリトグラフ(石版印刷)でしたので、1枚の絵を完成させるのに8~10枚の石板を必要としたとのこと。『花のメルヘン』では、なんと!150枚という大量の石板が使われたそうです。考えただけでも気が遠くなります。
石版印刷といえば、現在放送中のNHK連続テレビ小説『らんまん』でも、主人公の槇野万太郎が植物学雑誌発刊のため石版印刷技術を習得しようとしていましたね。
ちょうど同じくらいの時代に、日本とスイスに植物を愛し、描いていた人がいたとは、なんとも不思議な気持ちになります。
クライドルフの幻想的で美しい花や妖精を観た後に、クレマチスの丘を散策すると草花や昆虫たちが話しかけてくるかもしれないですよ。
その他にも、グリム童話の世界、スイスの伝説等、3人が育った環境や作品が生まれた背景等が感じられる展示となっています。
1枚をじっくり観たり、先を急いで観たい気持ちになったりと行きつ戻りつしながら、気が付けば3時間の時が過ぎていました。ビックリです!
わくわくしながらスイスへの旅をしていたのでしょうね。
父親の愛がたっぷり詰まった手描き絵本。
長い年月を経てもなお、色あせない作品の数々。
そしてこれらの絵本を読み継いできた親子の時間。
全てが愛おしくなる絵本展でした。
私が家に帰って真っ先にしたこと。
それは、
子どもと一緒に『おおかみと七ひきのこやぎ』と『こねこのぴっち』を読んだことです。
ホフマンが子どもたちへ愛の贈りものをしたように私も子どもたちへ絵本を読み合うことで愛を伝えたいと思いました。
ベルナール・ビュフェ美術館で開催中の
《こわくて、たのしい スイスの絵本展~クライドルフ、フィッシャー、ホフマンの世界~》は、7月2日(日)までです。ぜひ、絵本の世界へ遊びにいってください。
ちいさなお子さま連れの方には、別館一階のこども美術館もオススメ。
入場券は共通ですので、追加のお支払いは不要です。
木のボールプールや絵本コーナー等、落ち着いた雰囲気の中で、美術作品に親しみながら遊ぶことができます。
(参考)ママとね詳細レポ:
「【暑い夏も室内なら安心してお出かけ!】美術館ってこんなに楽しいの?!五感を刺激する!ビュフェこども美術館に親子で行ってきました」
※現在は、こども美術館は予約制となっています(詳細は上記URLにて)
まぼろしの2冊がグリムの蔵書に
絵本展では、まぼろし!と言われるホフマン作の『赤ずきん』も展示されていました。
クライドルフの『ふゆのはなし』も絶版となっています。
このまぼろしの2冊がグリムの蔵書にありました。
読んでみたい方は、お声がけください。
絵本専門店グリム
〒410-0022 静岡県沼津市大岡905-1
ウェブサイト: https://grimm-ehon.com/
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